炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)とは、広義としては腸を中心とした消化管粘膜に炎症が生じる疾患の総称といて用いられ、感染性腸炎や薬剤性腸炎など原因が明らか(特異的)な疾患と原因不明(非特異的)な腸炎に大別されます。一般的に、非特異的な潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)とクローン病(Crohn’s Disease:CD)の2疾患を総称してIBDと呼ばれています。
当科における特徴
兵庫医科大学は、炎症性腸疾患(IBD)の専門病院として20年以上前から内科・外科共に専門医による診療を行ってきました。社会的背景の変化に伴い本邦におけるIBD患者数は急激に増加しており、現在UC患者数は22万人以上・CDでは7万人以上と推定されています(2015年集計)。そういった背景から、当院では2009年に高度な知識や技術、豊富な経験を有する炎症性腸疾患外科と炎症性腸疾患内科によるIBDセンターを設立しました。現在では、2,000名の患者さんが当院に通院されており、国内屈指の専門外来となっています。また、全国の医療機関より重症IBD症例をご紹介いただき、内科・外科の垣根を超えた高度な専門的診療を行っています。
外来診療では、治療指針をベースに専門的な寛解導入・維持治療を行うだけでなく、多くの臨床治験に参加し将来の内科治療拡充に役立つ診療を行っています。また、重症症例においては専門病棟にご入院して頂き、臨床試験や治験を含めた最新の治療を行っています。クローン病症例についても、小腸造影やカプセル小腸内視鏡・ダブルバルーン小腸内視鏡などを用いて、それぞれの症例にあわせた治療プランを炎症性腸疾患外科と協力し構築・実践しております。また、昨今では腸管ベーチェット病や非特異性多発性小腸潰瘍症・MEFV関連腸炎・感染性腸炎など広義の炎症性腸疾患全般においても診療範囲を拡大し、大学病院ならではの専門的診療を行っています。さらに、豊富な症例に基づいた臨床研究・基礎研究も他の診療科と連携して行っており、高度な研究体制を維持しております。
若手医師への教育の充実も重要な課題とし様々なプログラムを実践しています。炎症性腸疾患診療は専門性の高い診療能力が必須ですが、一般的消化器分野の知識・技術も必要となります。当科の最大の特徴は、IBDを中心とした専門的研修を行えるだけでなく、同時に一般的消化器分野についての研鑽も積むことができることです。教育・臨床診療・研究、この三本の柱を中心とした、皆で手を取り合いながら社会に貢献できる、国内屈指の診療科であり続けたいと考えています。