わが国におけるがん患者の死亡数は年々増大傾向にあり、中でも胃癌、大腸癌は男女とも死亡数が多く、また食道癌も男性に多い傾向を認め、依然として一定の死亡者数が報告されています。そのため早期がんを迅速に発見、治療することが何よりも大切であると言えます。当院では最新の内視鏡機器を用いて、食道・胃・十二指腸・大腸腫瘍の早期発見と正確な診断に努めるとともに、最新の専門的な内視鏡治療を行っております。また、外科と連携した治療も積極的に取り組んでおります。

内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection: ESD)
内視鏡的粘膜層切除術(Endoscopic mucosal resection: EMR)

食道や胃、大腸の壁は粘膜層、粘膜下層、筋層という3つの層からできており、がんやポリープは最も内側の層である粘膜層から発生します。粘膜層までにとどまる早期の病変に対して、内視鏡で消化管の内腔から病変を切除します。内視鏡治療にはいくつかの種類があり、腫瘍の大きさや形によって適切なものを選択します。茎を持っている隆起しているような腫瘍(隆起型)の場合は、スネアと呼ばれる金属製の輪を腫瘍の根元にかけ、高周波電流を流して焼き切るポリペクトミーが用いられます。平たい腫瘍(表面型)に対しては、粘膜下層に生理食塩水などを注入し、腫瘍を持ちあげてからスネアをかけて切除するEMRを用います。2cm 以上の大きな腫瘍や、粘膜下層が硬くなり(線維化)、ポリペクトミーやEMR では切除が難しい症例に対しては、内視鏡用の電気メスを使って粘膜下層を剥離して腫瘍を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を用います。EMRの弱点を克服した治療法がESDです。2006 年に胃癌に対するESD 治療が、続いて2008 年に食道癌、2011年に大腸癌に対するESD 治療に対しても保険収載がなされ兵庫医科大学病院においても早くから積極的にESD による内視鏡治療を施行しています。

内視鏡的粘膜層切除術

超音波内視鏡(Endoscopic ultrasonography : EUS)

粘膜切開生検、超音波内視鏡下穿刺吸引生検(Endoscopic ultrasound – guided fine needle aspiration biopsy: EUS-FNAB)

EUSとは上部消化管内視鏡スコープに超音波を出す装置がついたもので、音波が跳ね返ってくる現象(エコー)を利用して粘膜下の構造、腫瘍を詳しく調べることができます。
上皮性腫瘍である癌やポリープは胃カメラで生検をして腫瘍の一部を採取することで診断ができますが、粘膜下腫瘍は正常の粘膜の下に隠れているため、通常の生検では腫瘍を採取することができません。そのため、粘膜を電気メスで切開し、その隙間から生検で腫瘍の一部を採取する方法(粘膜切開生検)や、超音波内視鏡を用いて、超音波画像を見ながら針を刺して吸引することで、腫瘍の一部を採取する方法(超音波内視鏡下穿刺吸引生検)で診断をします。

超音波内視鏡 超音波内視鏡
超音波内視鏡 超音波内視鏡
超音波内視鏡 超音波内視鏡

腹腔胸・内視鏡合同手術(Laparoscopy and Endoscopy Cooperative Surgery: LECS)

内視鏡医が上部消化管内視鏡(EGD)で消化管内腔から、外科医が腹腔鏡で消化管の外側から、共同で腫瘍を切除し、創部を縫合します。筋層まで切除する必要のある胃GISTなどの粘膜下腫瘍や、術後の偶発症(遅発性穿孔など)のリスクの高い十二指腸腫瘍に対して行います。最小限の切除範囲におさえることができ、機能温存が期待できます。当科では、外科との綿密な連携のもと、これらの合同手術にも積極的に取り組んでおります。

腹腔胸・内視鏡合同手術 腹腔胸・内視鏡合同手術